ときには、怖い人

脳みそミミズ男に凄まれる

ある深夜、僕が住んでいる集合住宅のゴミ捨て場へ、
ゴミを捨てに行ったのです。
がっちりとしたコンテナが備えられていて、
しっかりと蓋をすればゴミ出しの時間は自由。
そんなお気楽なシステムなので、
遅い時間でもゴミ捨てに行くことが多い。

行ってみると、新聞や雑誌を集積しておくラックで、
誰やらごそごそしていた。
どうも、本や雑誌なんかを持ち出そうとしているらしい。

要は、ゴミ泥棒です。
夜中の1時近くだから、住民は来ないと思ってたんでしょう。

「何やってるんですか。
ゴミとはいえ、ここから持ち出すのは
犯罪ではないかな、君」

と声をかけたんです。

30代とおぼしきその男は、一瞬ぎょっとしましたが、
こちらの外観を見て安心したんでしょう。
いきなり凄んできました。

ゴミ泥棒するような人間は、わかりやすい特徴を捉えて
そこを攻撃してきます。
僕の場合は、「ハゲ」でした。

「んだと、このハゲ」
「ぶっとばすぞ、このハゲ」
「何様だ、このハゲ」

僕が太っていたら、
「なんだこのデブ」になったでしょう。
頭の中身はミミズのように単純です。

結構ガタイのいいミミズは、
暴力を使い慣れているようです。
こんな弱々しい中高年のハゲオヤジ、
威嚇で退散できると思ったのでしょう。

僕はそこで(若干はびびったものの)、
毅然としているべきだ、と思い、
ミミズの雑言を聞き流していました。

すでにマインドセットができていましたから。

そして、冷静な頭で考えました。
こういうミミズに対しては、
わかりやすい反撃が有効です。

あ、暴力をふるうんじゃないですよ。

睨みを利かすんです。
凄むんです。
やってみました。

効果抜群でした。

ミミズ、びびる

しばらく黙っていたので、
すっかり萎縮していると思ったんでしょう。
「ハゲハゲ」攻撃はますます図に乗り始めました。

僕は伏せていた顔をゆっくりと上げ、
ミミズの目を見据えて言いました。
「文句あるのか、この泥棒」

低い声で、凄味を利かせて。
眼を細め、下から睨みつけるようにガンを付ける。

単なる弱いハゲオヤジだと見くびっていたミミズは、
ちょっとびっくりしたようでした。

思わぬ反撃。

「な、なんだこのやろー」

少し声がひるみました。

「何だじゃないだろう」
と、僕はもうひと言。

「や、やんのかこのやろー」
「このハゲ」から「このやろー」に変わりました。
臨戦態勢に入ったのかもしれません。
からかいのトーンから、実戦モードへ。

やるならやってやろう。
ケンカなんかしたことのない僕でも、
やらなければやられる、と感じましたから。

幸いなことに(?)、そこはゴミ捨て場。
手の届くところに空き瓶が出されていました。
目の隅でビール瓶があるのを確認。

殴りかかってきたらそれで反撃しようと。
ちなみに、バットやゴルフクラブだと、
長すぎて振り回しにくいんだそうです。

よし!
やおら身をかがめ、ビール瓶の首をつかみ、
膝を伸ばす勢いでミミズ男の側頭部を強打!
胸の悪くなるような音とともに、
瓶のガラスが飛び散り、
顔面を真っ赤に染めたミミズは
地面をのたうち回り……

 

いやいや、夢想です、夢想。
頭の中でそんなシミュレーションをしていたら、
「ちょっと、警察呼ぶわよ!」
という声で我に返りました。

さすがに口論の声は周囲に響いていたのでしょう。
トラブルを察知して、外に出てきた人がいたのです。

ミミズは形勢不利とさとったんでしょう。
そのくらいの知能はあったようです。
「てめー覚えてろ」
と、使い古された捨て台詞を残し、
ママチャリに乗って去って行きました。
(それもどこかから盗んできたに違いない)

ハゲの中に、牙を潜めて

ええと、特に武勇伝もなく、
単なる口論で終わった顛末をだらだらと書きました。
お退屈さまで申し訳ないです。

で、何が言いたいかというと、
ハゲ坊主もハゲスキンも、
表情の作り方によっては凄味を出せること。

その筋の人々の中に
坊主やスキンヘッドが多いのも、
それによって凄味を演出できるからです。

髪を落とす、剃るというのは
道を逸脱した証でもあるからです。

僧侶も、俗世という道から外れ、
仏門への帰依を誓った証に剃髪する。

身を捨てた凄味は、
坊主やスキンヘッドだからこそ出せるもの。

ふだんはおとなしく、いい人、ナイスハゲ、モテハゲの
僕たちでも、いざとなったら戦える。
しかも、暴力ではなく、凄味を武器に。

ハッタリ、かもしれません。
でも、それで無用な争いを回避できるなら、
大いに使うべきです。

その夜は放っておいたら暴力沙汰に
発展したかもしれませんが、
相手は明らかにびびっていたことは確かです。

ハゲの笑顔に、牙を潜めておこう。

毎日を過ごす中での自信につながります。

凄味を出せるハゲのメリット

怖いハゲの典型。簡単に別の人間になれるのが、ハゲのメリットでもある。

タグ

このページの先頭へ